みずいろ




@ねこねこソフト

ADV
税込9,240円
2001/04/13発売
原画:秋乃武彦・綾瀬悠 他
シナリオ:片岡とも・米村順一 他

ヒロイン:
片瀬雪希(綾川りの)
早坂日和(籐野らん)
進藤むつき(奥森香由)
小野崎清香(上本のぞみ)
神津麻美(堀奈生)
主人公:
片瀬健二


Getchu.comの紹介


□初感

 ねこねこソフトに興味を持ったのが既に解散の決まった後というなんとも間の悪いことで、リアルタイムに楽しめるのがサナララとスカーレットだけということに。それでも古典とされているみずいろだけはやっとこうと思い立ちました。
  秋葉原の中古店を探し回って見つけました。再販版です。定価より1000円高のプレミア付き。
  主人公が長男なのに健二ってのが引っ掛かるんですが、Whiteの主人公が健一だからなの? あと、8月生まれの進藤姉妹がむつきとさつきって絶対おかしいよなあ。もうあんまりこういうこと気にする人もいないんですかねえ。

□片瀬雪希

 このゲームの目的の大半がこの子でした。妹ゲー厶のバイブル的存在ということで。
  シナリオ自体は日和と健二を理想のカップルとしながら、想いを捨てられず追いつめられていく雪希と、雪希のために身を引く日和を同時並行的に描くわけですが。裏表のない日和の性格がひときわ輝くのもこのシナリオでして。ぶっちゃけ雪希より日和のほうを魅力的に感じてしまいませんか? 平和な日常が売りということで修羅場は書けなかったのかもしれませんが、雪希に保護欲を感じさせるにはちょっと追い込みが足りないかなあと。まだまだ良い子すぎるんです。家事も手に付かなくなったり、勉強にも身が入らなくなったり、情緒不安定になって突然泣き出したり、健二のことを想って自慰したりとかそういうのがあれば。まあ脳内補完しますが。もうちょっと苛めてもいいんじゃないかと。

□早坂日和

 メインヒロイン、ですね。最後にまわすべきでした。
  雪希のルートで日和の立ち位置もほぼ書ききってしまっています。この子は自分以上に健二のことを想う子が現れれば、自ら身を引いてしまうんですね。日和ルートを普通に考えれば雪希ルートを逆から書くしかないわけで、どうやって変化をつけるのかなと思ってましたが。これはえらい力技だなあ。いわゆる幼馴染の良いところ全部すっ飛ばして再会幼馴染にしてしまったよ。たぶんこれをやるために生まれたルート固定システムだな。問題は果たして皆が攻略したかったのはこの日和なのか? ってところですけど。
 幼少期に日和が身を引いた理由って雪希への劣等感からですよね。ならやっぱり雪希シナリオと相互補完の関係なんだな。日和にとっての未練はかつて諦めてしまった恋の成就。でもこれは動機としては弱いんですよ。健二も日和もお互いを忘れたまま普通に生活していたわけでしょう? 病室で波風のなかった人生を述懐する日和と、健二の前に現れる日和がどうしても結びつかない。だからこれは。当人同士ではない第三者の意志が働いているんだと解釈しました。作中で日和を認識できるのは健二だけです。ではそれ以外に日和の存在を知っているのは? 製作者とプレイヤーということになります。これはどちらでも問題じゃないんです。この作品が恋愛ゲームである以上、主人公とヒロインは結ばれなくてはいけない。その前提に立って我々プレイヤーは製作者と共犯関係にある。逆に言えば、その素の性格から健二と結ばれることが出来ない日和を表舞台に上げるために、これだけの仕掛けが必要だったと製作者は判断した。だからここに神の介入がある。
 何も特別じゃない日常を強調するこの作品でこの子だけが非日常の中にいる。この奇跡はどうして必要なんでしょうか。幼少期で、日和と雪希がお互いの夢について語る場面があります。日和の夢が健二のお嫁さん。雪希の夢が白馬に乗った王子様に迎えにきてもらうことです。でも現実は逆なんです。健二と二人で暮らし、家事を完璧にこなす雪希の姿は日和がかつて夢見た理想のお嫁さんそのものではないでしょうか? 雪希シナリオのラストシーンは健二が雪希の薬指に指輪をする結婚式で終わるんです。この現実において日和は絶対に雪希に勝てないんです。自分の夢を雪希に奪われた日和は虚構に逃げるしかなかった。雪希の夢だった、白馬に乗った王子様を待つお姫さまになるしかなかったんです。クローゼットの中におとぎの国があるってのはわりとポピュラーなフォークロアです。日和だけが開けることの出来たクローゼット。そのむこうの世界でだけ日和は万能になることが出来る。健二と恋人になることも出来る。そう考えるとね。まじかる☆ひよりんになって、ガンダルフ(!)や雪希を弟子にして遊び回ってる日和ってけっこう笑えない。まだこの子はおとぎの国から帰ってこれてないんだなあ。

□進藤むつき

 ようやくおとな進藤とやかま進藤のネタがわかりました。おかしいとは思ってたんですよ。この子は雪希のこと雪希ちゃんって呼ぶのに、雪希はこの子を進藤さんって呼ぶんだもん。友達表現としてこれはおかしい。で、幼少期の姉妹が出た段階で、まあ入れ替わりネタなんだなっていうのはたぶん100%わかると思います。以下、健二に事実を告げることの出来ない、本当は元気な進藤妹さんがどこで爆発するのか楽しみに進めてました。が、あれれ、最後までこのまんま? このルートは完全におとな進藤さんに人格が変わっちゃってるわけですか。うーん。確かに環境によって性格が変わるってのもあり得ることではあるんですけれど。雪希ルート、日和ルートで感じた違和感はここで最高潮。俺が攻略したかったのこんな子じゃないんですけどー! ああ、でも健二の好みに合わせてこうなったのだから、健二には幸せな現実なのか。しかしなー。ねこねこソフトの人気キャラランキングで進藤さん、二回連続優勝とかしてるんですね。で、皆さんが好きになったのはこの進藤さんじゃないよね。

□小野崎清香

 ちょっともったいないキャラでした。作品が違えばメインを張っていてもいい子です。というかたぶん幼馴染を前面に出せば、この子は雪希に負けないですよ。健二と性格が近いんですよね。お互いをわかり過ぎるゆえにぶつかり合うという、仲良くケンカするキャラをやりたかったのだと思うんですけど。それにしては健二がちょっとこの子を突き放しすぎというか、幼馴染のわりに思いやりが足りないというか。本気で脅迫に屈してるの? 照れ隠しじゃなくて? っていうあたりがちょっとちぐはぐな印象。後半で徐々に可愛くなっていく清香の描写はなかなか良かったです。事件らしい事件を全く起こさずにシナリオを締めた点も好評価。最初と最後で変わったのって清香がちょっと大人になったというそれだけですもんね。まあ実際に女になっちゃってるわけですが。家族以外の価値観を持ったことで余裕が出来たってことなんでしょう。

□神津麻美

 幼少の出会いを使わない唯一のヒロイン。公園を特別な場所だと言った先輩ですが、皮肉なことに、健二は過去に日和も清香もむつきもみんな同じ公園で出会ってるんですね。
 同じ学校に三年通って一人も友達がいないってのはどうなのかなあ。自分から閉じこもってるにしては、清香や日和とも普通に接してるし。性格悪いわけでもないし、いじめられてたってわけでもなさそうだし。そういう浮いてる人をほっとけないっていうタイプがたいていクラスに居たりしませんかね。趣味の仲間が欲しければなんか部活でもすればいいのに。美人なら普通に男が寄ってくるよなあ。
  みずいろは総じておとなしいキャラの多い作品で、健二の好みがそうだからしょうがないんですけど、雪希に日和に進藤さんと経てきてこの先輩もおっとり型。これではこのキャラ埋没します。卒業絡みでドラマを作るのかと思ったら、なんだかいちばんまっとうな恋愛シナリオで来ましたよ。そうね、卒業したって普通に会えるし普通に恋人でいられます。ほんとに普通だ。最後だけちょっとご都合ですが。歩く早さに違和感を感じる雪希の描写とかいいですねえ。

□みずいろ

 日和ルートクリア後に開きます。おまけではなく、作品そのもののタイトルを冠していることからもこれが真ルートということですね。だけど、ここで出てくる日和は日和ルートでの自分を真っ向から否定します。どころかおそらくこれはどのルートでもない、どのヒロインとも結ばれなかった結末だと思います。これがたぶん日和にとって最も幸せな本当の日和ルート。自然に健二に寄り添うことの出来るルートです。それは二人に何も起こらなかった未来。恋愛も成長もドラマ性のあるもの全てがきっと日和には必要のない余計なものなんでしょう。片岡さんは幼馴染好きで有名な人らしいですが、日和ルートやった時、俺はそれ嘘だろうと。でも、このみずいろでわかりました。片岡さんにとっては幼馴染と恋愛することのほうがよほど嘘なんですね。個別シナリオまるまるひとつ犠牲にして、この日和をこそ書きたかったんだなと。

□まとめ

 幼少期の選択でルート固定というのがとにかくびっくりしました。これによってその後の各ヒロインの性格や人生まで大幅に変わってしまうというのがずいぶん思い切ったなあと。Fateみたいに、ルート毎の各キャラの役回りの違いを楽しむって部分が徹底されてたら、それはそれで面白かったかも。共通パートをほとんどスキップで飛ばすゲームも多い中、各ルートの日常パートを全部書き直してるこだわりはいいですね。進藤さんに象徴されますけど、雪希も日和も個別ルートではかなり性格が違います。逆に言えば主人公健二のパーソナリティには全くブレがありません。普通はヒロインが5人もいると、個々の事情に合わせて主人公が歩み寄っていく中で、主人公の性格に無理が出てくるというのがエロゲ共通の悩みだと思うんです。そして、ヒロイン分岐のゲームでは選ばれなかったヒロインはいったいどうなるのかという問題。みずいろの場合、初期段階で攻略対象ヒロインの側がすでにある程度健二に合わせていて、それ以外のヒロインは健二に惚れる可能性すらないわけです(日和だけは例外ですが)。これはヒロインのキャラ立ちを第一とする恋愛ゲームでは相当異色。ここのライターさんは主人公がブレるのを嫌うんですかね。まあそれでも先輩以外みんな幼馴染かよっていう強引さは否めないなあ。そして他ルートのほうがどうしても魅力的に感じてしまうヒロイン達。
 ねこねこでヒロイン毎にルート分岐があるのってWhiteとこれとラムネだけ? あとは全部、主人公とヒロインは一対一。そしてみずいろとラムネは幼少のルート固定という点でやはり主人公とヒロインは一対一なんですね。自社キャラへの愛なんだろうなと思います。

□評価

 70点。個別ルートで案外萌えられないヒロイン描写がちょっと俺にはきつかった。雪希は可愛かったです。これだけなら60点くらいなんですけど、わかってくるうちに日和のことがなんだか愛おしく思えてきて加点しました。あと、音楽いいですねえ。特に「スカーレット」。


 

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